『巻頭言』 (これは極最近のお写真です) 会長 照井 邦彦
暖冬とは言ってもやはり寒い日が続いている。コタツに暖を取りながら、うつらつつらと過ぎ去った日々の事に思いをはせるのは冬ならではの情緒です。
そんな或る日、粉雪のサラサラと積もる音が聞こえそうな静かな夜でした。私は夢の世界へ誘われてーーー80日間世界一周のホステリングに数人の友と出発しました。米国ではケネディ夫人と逢い、ロンドンではシャーロックホームズと語り、パリで美味しいコーヒーを飲み、ドイツのアルテナ城ホステルに泊まり、ソ連で月ロケットに便乗して月へーーーそんな奇想天外な夢でした。こんな旅もしてみたいものです。第一にロハですし、時間も数秒しか入りませんものね。 グループも三才の春を迎えようとしています。今では会員も七十余名を数えるに至り、発展の一途をたどっています。仲間の増えるのは、金と同様誠に嬉しいものです。 今年も、陸中海岸、八幡平、十和田とホステリングを重ねて楽しい中に親睦を計りユースホステル精神の一端なりとも掴み得た様に思う。内にあっては集会で語らい難しい議論に頭を悩ましたものです。 活動の停滞しがちな冬にあっては、会誌「おぼっこ」第二号が編集されている。やがて会員の楽しい思い出の記を読む日が来るでしょう。「おぼっこ」も一つ年が増えたーーー 諸君!ユースホステル精神の若々しい心を常に失わず、ホステリングに集会に楽しくしかも意義ある活動を続けよう。YH運動は世界平和にも続くというが、せめて僕らの健全な学生生活を送るべくグループを育てて行こうではないか。 (さすが照井さん、今でも通じるこのお言葉の数々・・・!) 『会長さん!コンニチハ?インタビュー』 (これは極最近のお写真です) (T2) 中島常雄 いつものことであるが前に女性がいるとどこに目やれば良いのか惑う。彼はタバコを出して口にくわえた。そして煙を出す度に窓ガラスを媒介としてその人の顔を見た。その人は始め週刊誌を読んでいたがあまり面白くないようですぐにたたんでしまった。どうも様子からすると何か話しかけてもらいたそうである。それを見ると、彼は何か笑い出したいような気持になった。そしてこう心に決めた。向こうが話しかけてくるまで絶対話しかけまいと。そう思うと彼は退屈しなかった。目のやりばには苦労した。目が合うとどうも話しかけなくちゃ悪いような気がしたからだ。オーバーをかけて寝たふりをしたり、タバコをふかしたりしてごまかした。まるでゲームしている様に彼は楽しかった。そして彼女がつまらなそうな顔をしていたのでなおさらだった。 汽車は函館に近づいた。彼は連絡船に乗ったら思いっきり話をしようと思った。汽車が函館の構内に入った。人々は荷物を持って戸口の方へ列び始めた。いよいよゲームも終わりに近づいたと彼は思った。 「すみませんけれどそちらの側にある荷物おろして下さいませんか」 ついに勝った、と心の中で彼はバンザイを(それほどでもないが)叫んだ。連絡船にのるためにプラットホームにたくさん列んでいる。船の中では話をするぞと思いながら、彼女に続いてプラットホームにおりた。 すると何ということだろう。彼女は一等の方に並ぶではないか。もちろん彼は二等である。彼はボンヤリと駅の外をながめた。さっきまで降っていなかったのにいつの間にか雪がふり出していた。 (実に中島さんらしいと、思いませんか?) 目次に戻る |