「おぼっこ」6号(昭和43年7月1日発行)復刻版



『巻頭言』

(これは極最近のお写真です)
会長 高橋 義幸

 ユースホステル運動の根本にはヒューマニズムが底流している。テクノロジーの発達は、マスコミ、マスプロを助長し、大衆の生活意識を大きく変える。我々は次第に画一化され、受動化されてきている。それら人間疎外へのささやかな抵抗としてニセリズムが頭をもたげる。その虚無的行動の中に人間性を見出そうとするのである。我々は野山を愛し、旅を好み、一時的に世俗から離れたい、また現実の硬化した巨大な組織の中から抜け出たいと、逃避的境地に彷徨う。しかし、それにおぼれていたのでは、あまりにも消極的である。もっと積極的でなければならない。
 ユースホステル運動を考えてみると、非常に曖昧なものの様に思われる、しかしこれを悲観的に受けとめてはいけない。画一化、受動化されつつある我々は、こんな活動に、自主的、能動的になれうる、チャンスがあるのではないだろうか。
 我々は若者らしく、自主的に能動的に試行錯誤を重ねて、この運動の本質を見極めてゆかなければならない。そして後続に伝うる任務を負わされている。
 太平な世の中が続く限り、レジャーブームは続くだろう。そんな中でこの運動は大きく膨張していくに違いない。しかしブームに翻弄されていたのでは久続性はもたない。この運動の息を長くするためにも我々ホステラーは、常に自主的に能動的に運動を形成してゆかなければならない。それでこそ真の人間性を見出し、育んでゆけるものと信ずる。そして、それは、個人的なものに滞まることなく全人的ヒューマニズムでなければならないと思う。
(ヒューマニスト高橋さんがここにいました。ビックリ!!)


『グループ員夜話』

   
”人”
 二年前までの卒業生は、何の所以か男女半々であった。意図したわけでもあるまいに。その割には当時はカップルが生まれなかったのは、意識しすぎたためか。最近はその均衡も破れ、男性の嘆きが激しくなってきた、それが亦、グループの言動力ともなっている。曰ク、来年こそは新入生を沢山勧誘してやるぞ!
 実に涙ぐましい話ではあるが・・・。

   
”酒”
 ホステリングの帰りに飲む一杯のビール、この一杯のためにグループに留まっている部員も少々・・・。いや全員がそうかもしれない・・・。
 登る苦しさも、歩く苦しさも、孤独の苦しさも、一杯の酒が忘れさしてくれる。そして酒場・・・たとえそれが誰かの下宿であっても、・・・そこはたちまち学生の、いや若人の人生哲学の実践の場ともなり得る。人生を語り、恋を語り、グループを語る。
 ここにも老人の嘆きがある。酒はうまい、美人もいる・・・、しかし、最近の若いもんにゃ風情が足りねえな。そう故人曰ク、花鳥風月の心だよ。いわば酒は心で飲むもんだ。ウィー、ああ、俺あ、酔っ払っちゃった。

  
”思想”
 研究発表にもあるように、赤化防止云々される運動でもあるが、共通点は、あすの旅を思い、昨日の旅を想うところにピタリと呼吸が一致する。なかにはラテン語で「学校」という言葉は「ひまつぶし」から由来するということを知ってか否か、大学とは結局、友を見つけ、酒、たばこ、女(もしくは男)を知る場所で一種のパーティみたいなものと語る者もいれば、学生は理性的に快楽に耽ることは嫌悪すべきものと頑張る人間もいる。
 そこに議論があり、発展がある。反動あり、革新あり。しかし終局に若人として残されるのは進歩あるのみ。
    さあゆけ、阿鼻叫喚へ  そして、抜山蓋世の勇をもて!

  
”運動”
 あえてここにスポーツといわずに運動と出したのは、運動という語の巾広さを示したかったがためである。何しろ百余名の部員をかかえるともなると、いろいろの運動がある。
 オリジナルな所で指の運動はパチンコ、始めたら徹夜も辞さずと頭の運動と称すマージャン、全身美容よろしきダンスを皮切りにボーリング・・・以下省略、但し、概していうなら皆、クラシックな所が多く、近代的運動に追いつけないきらいがある。むろん興味がないわけではない。これもグループ役員が、公式、非公式とりまぜて、他での運動に負けぬほどに、忙しく企画をたててくれるせいだろうと感心するむきもあるが、本心はいかがなりや?夜な夜なネオン街を散歩するのも国際人としての教養を身につけるため・・・本当かい?(克)

 
『おぼっこの仲間たち』
  
常に笑っている人もいる。部屋の隅でむっつり黙っている奴もいる。
一心不乱に本を読み耽っている者もいる。
目だけが部屋の角から角へと急がしく働いている奴もいる。
机に書かれたラクガキを見ながら笑いをこらえている人もいる。
口角泡を飛ばして討論している者もいる
毎週、毎月、毎年繰り返して来た、
この情景の顔の形も今や百八十を越えとしている。
いろんな人間の集団、その中の個人として、
グループ員の自称する横顔がここにある。

『アンケート』から

 短い文の中に沢山の意味深な事を書こうとするほど難しいものはない。熟考したもの、天賦の才あるもの、かろうじて書けたもの・・・とにかく、いろいろあらあな。

ユースホステルとかけて何ととく?

 そのこころは?

・ズボン下ととく。
 真面目にやると恥ずかしい気もする。(加藤秀信)
・親のないすずめととく。
 われと遊べや・・・。(細川浩美)
・クラブの女の子ととく。
 便利なようで便利でない。(高橋邦夫)
・未熟児ととく。
 母胎の栄養のとり方が悪かった。(中村研一)
・結婚相談所ととく。
 理想通りのものはなかなか見つからない。(佐々木淑子)
・欲求不満ととく。
 飯も女も限られている。(吉田保志)
・美人ととく。
 いつも寄りたくなる。(田中秀郷)
・近松門左衛門ととく。
 人世(一夜)のなごみが残る。(中野克彦)
・東京ととく。
 人が多くなり過ぎた。(伊藤久雄)



『送辞』
 

 風破窓を射て、橙火消え易く、月疎屋を穿ちて夢なり難し。 秋の夜すがら所がら、物凄まじき山陰に、岩木を友と墨衣。
 ここに送りす十と二人、その昔より、ユースなる壇特山の山籠、阿羅々仙人の弟子となり、無想有想を学びける。難行苦行の苔衣、過ぎし月日もあずさゆみ、はや四年となりにけむ。そのかひありて、積る白雪、窓にみて聖人の称を贈られしに、われら後輩心も澄みて頼もしし。

伊藤久雄(元会長 機械)
 見ました。聞きました。話しました。
グループ内スタンプナンバーワンを誇るこのお人、浅いこと、深いこと、実によく知っていらっしゃる。時として、意味深になるのもそこいら辺が・・・。 いろいろあらあ・・・ね。

掘慧子(元記録 甲二)
 主曰く「次自身を知れ!」
 そして彼女は実によく自分というものを知っています、 やじ馬の批評も・・・。誰かがどこかでつぶやく一人言も・・・だからこそ、自分でも言えるのです。 色の黒くてかわいい小さな女の子とも。

関口哲(元会計 応化)
 故人は虫も殺さぬ顔をして、とは良くも言ったものだと、この人を見るたびに想い出す。:いえいえ悪く取って下さいますな、お役目に忠実と申しましょうか、それにこの人、どこから出てくるのか、ちょっびり大人の童話もお作りなさる。(でももう少し、人間の裏を見るのも必要じゃありませんかな ・・・八時半の男)

玉山ヨシ(美術)
 人物評「他人の悪言雑言にもびくともせず、つねににこにこしておわし、絵画なる天賦の才を持ち、人間高揚にして、その人柄まろやかなり。その瞳には、高山植物が如くのほのぼのとした純情さをも匂わせてくれ、時として学ぶところによるか、才によるか色の多彩さも見せてくれる。将来に望む所大なり。」

浪岡敏幸(元企画部長 金属)
 笑っている時の顔と、鬼隊長よろしく競然としている時の顔と、どっ ちが多いか比べてみた人がいたそうな。 それほどこの人、色々な面を持っている。人間の喜怒哀楽、その縮図だという人もいる。それが多くの立派なリーダーを育てまし た。 でも、でも、やっばし顔の筋肉のゆるみっばなしになる時もある:さね。その時は知らせて下さいね。

富長光彦(元企画部 林学)
 男A「学校の校内で時々お会いしますけど、忙がしいのでしょう か。」
女A「富長さんて、歩くスタイルすごくきれいね、あたしも歩きかた教えてもらおうかしら。」 男B「俺いつも会うぜ。どこでってか、そのつまり大人の社交場でだ。人はダンスホールともいうけどな。」
女B「ああ、わかった、いつかクリスマスの前にダンスを教えて くれた人ね。」
 何をか申さん:です。

小原秀子(元企画部 甲二)
 デコちゃんてさ、意外と意外なとこあんのよ。あの人のねえ、好物てさ何だと思う。それがねえ、日本ソバなんだってさ。 でもさ、最近言うことが憎いのよ、あの人こんな事いうのよ、 「私ね、え、やっばりあの人のソバがいいわ。」

田中秀郷(元副舍長 林学)
 この人、常に悩みました。悩んだが故に彼という人格が出きあがりました。まあみてやって下さい。・・・:(これは影の声)
 渉外に関して、集会に関して、ミーティングに関して、もちろん 彼女の事・・・も:とに角、人を楽しませるため苦労してくれた、そ の努力・・・:そのせいか、体重の方は一向に努力のかいが御ざいま せんでしたなあ!

八重樫和子(元副会長 国語)
 私は赤いキャラバンシューズ。私の御主人様は、どこへ行くにも私をつれていってくれました。だから私、一生けんめい足に豆を作らないように、気をくばってやったのに、御主人様ったら、他人事みたいに、私ねえ・・・:とホホエンでいらっしゃるんだもん。三陸踏破の記録も持つが、これからは、やはりねえ。 後輩一同期待してます。

山村達也(元縱務部長 農学)
    登りゆき遠山見むと
    爪立てど背よりも高き”山むら”竹かな
    後輩より期待をこめて送りしことば。
 恋という文字の字形を判じもの、言葉しからむから糸の、解くにとかれぬしたごころ。

志田美奈子(元企画部 甲二)
 小さな真珠のような雨の降る日でした。真赤なコートのあなたは、白いブーツで学校へ通って来ました。冷たくアスファルトを 打つ雨の中に、どこから迷い込んだか一匹のカエルがキョロキョロ していました。赤いコートのあなたはそのカエルを、そっと畔道に返してやりましたね。 ほんとにそんな人でしたお美奈さんとは。ああ・・・:。

藤本勇二(元企画部 機械)
 哲学憮然とした顔で、数学的そのふるまい。 巷の噂は、そこいら辺までしか流れてきませんが、いかがお過しでしょうか。近況御一報下さい。
目次に戻る