池造りのポイント・1
日本リフレッシュ研究所 

錦鯉を飼う池 

 私の趣味は海外旅行です。暇さえあれば、家内と二人で見知らぬ土地を旅することを楽しみにしています。 
 職業柄最も興味のあるものは、なんといっても庭園と池・噴水です。欧米では、家屋と庭園とが、素晴らしい調和を保って大切にされていることがよく分かりますが、錦鯉や金魚などの生物を飼う池造りはされていなかったと思います。錦鯉を愛する欧米の人々が、《錦鯉池》を庭の建造物の一つとして、重要な位置付けをしている心意気には胸を打たれます。
 一方、わが国の日本庭園はもちろん、世界に誇るものですが、
山水を真似た池は日本庭園の一部であって《錦鯉を飼う池》として作られた歴史は、まだまだ浅いのです。
 なぜならば、錦鯉は日本人が近年、交配によって作出した一種のペットだからです。
そのために、これを長く美しく飼うには、生き物を飼う設備が必要です。ですから、日本の場合では、庭園というよりも、錦鯉を飼育することだけに夢中になり大金をかけて驚くべき大掛かりな、池の設備をしているのが良く見受けられます
  
無駄な費用 

 しかし、私は、それらの大掛かりな池水の濾過設備には、賛成しかねる思いを抱いています。 なぜなら、前回にも述べました様に、ほとんどが思い違いのもとに、設計された池だからです。
失礼になることを承知の上で苦言を呈しますと、《浄化と濾過の違い》をはっきり理解せずに、無駄な費用を掛けた池造りが、横行しているように思います。
 これでは錦鯉が可愛そうです。
 水が透明だから、錦鯉にとって適切な生活水とは言えません。水質検査上の数値がすべて基準内であっても、必ずしも錦鯉の健康を作る水とはなり得ません。餌食いが良いから、泳ぎがいいから、と安堵しても、それを長続きさせなければ錦鯉の健康は維持できません。
 池の水は錦鯉にとっての全環境であることを常に念頭におき、自分の池の《濾過》について「なぜ、そうしているのか?」と、もう一度問い掛けてみてください。無駄なことを沢山していることに気付かれることでしょう。
浄化と濾過の違い 

 皆さんの思い違いを一言で評すると、考え方の基盤を《濾過》においていることです。
 濾過とは、水と異物を分離することに他なりません。濾過そのものがいけないと言うわけではありませんが、
錦鯉の健康を作るために必要な物質まで、池水から取り除こうとし、そのためには、濾材の洗浄という作業が必ず必要になりますし、底水の排水を頻繁にすることになります。
 《正しい浄化》がなされると、人間の排泄物が、有効な有機肥料になるのと同様に、
鯉の糞は、バクテリアによって、水を汚す前に素早く分解され、鯉に有効な水を作り水の透明度を維持することが出来ます。
 その上、取り除くものがないので、濾材の洗浄がいりません。 池水を汚す原因の多くは、鯉の糞と食べ残しの餌ですが、中でも一度消化されて、生物体内から排泄された糞は窒素性有機物で、分解しやすく、浄化槽に住み着いているバクテリア達の絶好の餌になる物質です。

 また、バクテリア達は私達には見えないミクロ界で互いにバランスを保ちながら生きています。何かの種類が多量に増殖したり、減少しすぎると、均衡が崩れてしまうのです。そのための環境作りは、もちろん必要です。
論より証拠 

 さて、浄化槽の容積は大きいにこしたことはありませんが、池との水量比は十分の一もあれば十分です。そんな馬鹿なと、おっしゃる人がいれば、私に相談ください。 論より証拠……私の手がけた三百二十以上の池がそのことを証明しています。

沈殿槽は無用 

 棄てる物がないので、排水溝があれば沈殿槽はもちろん不要です。そんな余分なスペースがあれば、浄化槽として利用してください。浄化槽は少しでも広いほうが有利なのですから。確かに上水道に使われる水では沈殿が行われていますが、これは日本の場合、底がコンクリートであくまでも緩速濾過であり、沈殿させるためには広大な敷地や時間が必要で、薬品を使ったりします。(欧米では、底が土です)比重差くらいでは、ほんの一部しか沈殿させられないでしょう。
なお、池底や沈殿槽の底から、排水溝までパイプを敷き、立ち上がりパイプを立て、水を一時的に堰き止め、それを朝昼晩と何度も抜いたり、何日置きかに抜いている例がありますが、ここには空気が通らないため、嫌気性菌の巣窟になって、池底に敷かれたパイプの中の水が腐ってしまいます。従ってこの水を抜くと、猛烈に腐い臭いがするので、悪い物質が除外出来ると錯覚して、喜ぶ人がいますが、これは池水の循環システムをわざわざ不備にしたために生ずる、腐れ以外のなにものでもありません。
 その上、排水する際には沈殿物どころか多量の余分な水まで排水することになります。
浄化槽さえあれば、なにゆえ沈殿槽が必要なのでしょうか。
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